安部トシ子からのメッセージ 乗り越えた先にあるふたりの幸せを信じて

2020年4月21日

今朝、新緑の樹々の枝越しに空を見上げました。青空はきれいで葉の緑も柔らかく、「幸せだなぁ」と思いました。自分にはまだ空を見上げる余裕がある。そんな気づきに幸せを感じたのです。みなさんのなかには式が延期になり、暗い気持ちの方も多いのではないでしょうか。減俸されたり職を失って、不安にさいなまれている方もいらっしゃると思います。

新型コロナウイルスは、瞬く間に世界中に広がりました。経済は冷え込み、ウエディング業界も大きな打撃を受けています。けれど、こんなときだからこそ、私は両脚に力を入れて立ちます。そうでなければ結婚式を守ることはできないからです。覚悟があれば、みんなで進んでいけると信じています。

2011年、東日本大震災が日本を襲いました。震災から2ヵ月が経った5月、福島のとある専門式場さんから連絡があり、私はいわき市に向かいました。「みんな気持ちが下向きになっている。元気になれるようにセミナーを」と依頼されたのです。  セミナーには式場スタッフの方、そして結婚式がキャンセルになったお客さまが約100名、参加してくださいました。泣いている花嫁さんに「よかったね。あなたには今、手を携える相手がいるじゃない。パートナーがいれば乗り越えられる。誰もいない人もいるのよ」と言ったことを覚えています。
大変な災害にあった人というのは強く、そしてやさしくなれます。あのときの花嫁さんたちのなかには今、子育て真最中の人も多いでしょう。彼女たちはこの2度目の試練にも、きっと力強く立ち向かっていると思います。
いわき市に向かう常磐線から見た景色は、進行方向右側、海に面したほうにはブルーシートばかりが目立つ一方で、左側には普通に家が建ち並び、田んぼには稲の緑がゆれていました。線路をはさんだ左右のどちらに住んでいるのか、それだけのことなのになぜこんなにも違うのかと、涙が止まりませんでした。
今回のコロナ禍も、これが日本のどこかの地域だけに発生したのなら、「どうして私たちだけが」と、絶望感は計り知れないと思います。けれど今は世界中が同じ災難にあっているのです。世界中の人たちが立ち向かっているのに、自分だけが絶望していても始まりません。前に進むしか道はありません。
この試練の後に行われる結婚式は、今、ふたりが行おうとしているものとは違ってくるでしょう。辛い経験を通して人間味も柔軟性も増したふたりの結婚式は、今以上に素晴らしいものになるはずです。
あなたも、あなたのパートナーも、そして結婚式のスタッフもみんな一緒です。ここを乗り越えようと思う気持ちはひとつ。だからこそ頑張りましょう! そして頑張ったあなたが得るものを、心に描いてほしいのです。1年後、5年後、そして10年後のあなたを想像してみてください。あなたはきっと強くてやさしい、素敵な女性になっています。

25ansウエディング オンラインより https://www.25ans.jp/wedding/guide/toshikoabe_20_0421/

取材・文/井出千昌